最高裁判所第二小法廷 昭和27年(あ)5134号 決定 1954年7月14日
主文
本件上告を棄却する。
理由
弁護人田中泰岩の上告趣意第一点は事実誤認の主張であり、第二点は、記録を調べると所論予備的訴因の追加につき、第一審公判廷で裁判官より右請求のあったことが告知され、之に対し弁護人より公訴事実の同一性がない旨の意見が述べられたが、裁判官は右追加を許可する旨決定がなされていることの公判調書の記載がある点より考えると、当時右追加請求に関する朗読がなされたことを推認するに十分であるし、仮りに朗読がなされなかったとしても、前示の経過から見て、被告人側には右追加事実に関する防御の機会は十分に与えられたものと認むべきであるから、結局判決に影響することの明らかな法令違反ありとはいえないのである。されば所論は単なる訴訟法違反を理由とする主張に帰し刑訴四〇五条の上告理由に当らない。また記録を調べても本件につき同四一一条を適用すべきものとは認められない。
よって同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)